
当院の取り組み
about us

ACP
(アドバンスケアプランニング)
私たちは、病気を抱えながらも地域で生活をする方々を介護職、福祉職の方々と連携して、患者様(そのご家族を含む)の生活に合わせた医療を提供する役割を持っています。地域で生活する患者様の生活に合わせた医療を考える時、その人らしさを考えることがとても大切です。患者様が何を大切にしているかといった価値観を受け入れ、病気になっても工夫次第でやりたいことを続けられる可能性を示唆し、患者様の生き方の選択肢を増やし、生きることへの動機付けにつなげることを一緒に実践することは、患者様の生きる希望につながります。
近年、高齢化の進展や人生観の多様化に伴ってACP(アドバンスケアプランニング)の重要性は高まっていますが、ACPの社会的認知、方法論の確立や具体的な支援ツールの開発等については発展途上であり、医療を提供する側でも十分に理解が進んでいないのが現状です。
患者様の些細な変化をキャッチして、思いを共有するという、今まで意識せずに行っていたいつものケアの中にはたくさんのACP要素が散りばめられていることに気づくことが必要です。ACPを考える上で、患者様の想いのかけらを集め、他職種と共有していくことの必要性を感じています。
ケアはその人を知ることから始まります。日頃のコミュニケーションの中で患者様の価値観を理解しながら、患者様の今後の気がかりへ関わり、多職種連携によるチームアプローチ、社会資源の調整、家族ケアなどの意思決定支援のアプローチ、そして、その先の人生の終末期にあるお看取りまでつながるアプローチを意識して実践することは、患者様の満足度、残されたご家族のグリーフケアにつながり、また、支援者様自身のケアにも結ぶつくと考えます。
「ACP」という言葉は、高齢者にとって馴染みにくさがありそうです。国が定めている「人生会議」という言葉の普及と共に、患者様が自分自身の生き方に向き合い、考えられるようになることが大切であると思います。生き方を考える為には、「死」もしもの時を考えることが必要です。
最期の決定を行うことだけがACPではありません。患者様を中心に多職種連携し、患者様の大切にしていることや希望を支え、繰り返し話し合う対話を重ね、その方の物語を紡ぐことからACPの1ページ目が始まるのではないでしょうか。

ACPの入り口に
「もしバナゲーム」を!

「もしバナゲーム」をご存じでしょうか。
米国で誕生した「The Go Wish game」を亀田総合病院の医師たちが日本語版に訳したもので、人生の最期をどうありたいかを気軽に話題にできるカードゲームです。
カードに書いてある個人の「価値観」や「選好」を、人生に大切な‘想いのかけら(piece)として手札に集めます。もしもの時のことを話すことは縁起でもないという抵抗感が薄れたり、人生の最期という「人ごと」のことが「自分ごと」にして考えられるようになります。お互いの価値観を確認でき、また、他者が異なる価値観を持っていることに気づくこともできます。
人は、死を考えることで生き方を考えます。「もしバナゲーム」を通して、あたりまえにもしもの時の話し合いができる、そして、自分らしさを大切にできる地域づくりに貢献できるよう、伊東ホスピスケアクリニックはACPの普及啓発に取り組みます。
“グリーフサポート ミモザ”
について

伊東ホスピスケアクリニックでは、在宅療養を支援させていただいた方々を対象とした「グリーフサポート ミモザ」を開催しております。
この会では、ご自宅でお看取りをさせていただいたその先も、残されたご遺族とのつながりを大切に、泣いて笑って揺らぐ感情を語り合う大切さを感じております。
大切な人と死別したときなどに、私たちの心身に起こる様々な反応が「グリーフ=悲嘆」です。その悲しみと嘆きは計り知れず、回復することは容易なことではありません。そのような「グリーフ=悲嘆」に苦しむ人を援助することを「グリーフサポート」と呼びます。
大切な人を亡くし、亡くなったことが受け入れられず、夢だったらいいのに…もう一度でいいから、会いたい、話したい、触れたい…なぜ…
悲嘆を抱え生きる毎日は、悲しみと怒りと悔しさと寂しさに苦しみ、やり場のない様々な感情の嵐です。涙でいっぱいです。
そんな中、大切な人がいなくなった現実に耐えられない思いを抱えながらも、この暗く、つらい日々と、向き合っていかなければならいことも現実です。
悲嘆は決して隠すべきものでもなければ、なくすべきものでもありません。私たちとありのままの想いをゆっくり語り合いませんか。
同じ体験者の方々と、悲しみや苦しみをともに分かち合い、支え合っていくことが、前を向いて歩いて行く際の杖となり、勇気となるでしょう。
今は亡き、大切な人との、心の架け橋が生まれてくるでしょう。哀(あい)に触れることで、愛(あい)を確認することもできるでしょう。
大切な亡き人からのバトンを受け、新しい世界とつながり、ともに未来の物語を紡いでいきながら、きっと穏やかに笑顔を取り戻せるはずです。
毎年2~3回の「グリーフサポートミモザ」の開催を予定しております。
大切な方を喪った苦しみにある方たちが、日頃の生活の中では話せない思いを互いに語り合い共有することによって、再び生きる力を得られるよう、心和らぎ、癒されますようにと願うばかりです。
また心身の不調が著しく続き、日常生活に大きな支障が出る場合には、専門機関や専門職の力を借りることも大切です。
ご相談ください。あなたのこころとからだが少しでも癒されますように…。

音楽を奏でるホスピスケア

伊東ホスピスケアクリニックでは、ケアの一環として、患者様の生前からお看取り後のご遺族のグリーフケアに取り組みます。生前では、予期悲嘆を促すことを目的とし、お看取り後では、ご遺族が大切な方との形を変えた新たなつながりや支え気づき、思慕の念を抱きながら生きる一歩を踏み出せるよう促すことを目的としています。
その取り組みの中で、グリーフサポートミモザの定期開催や日々の訪問診療において、音楽に触れる時間を提供します。音の旋律と、旋律に乗せて伝わる言動は一瞬にして人の心の琴線に触れます。音楽によって思い起こされる記憶や感情は、人生の物語として紡がれ、人の心を良くも悪くも大きく揺さぶる儚いものです。言葉を超えた対話ができます。自然と互いに触れ合い、人のぬくもりを感じ、心地よいつながりが生まれ、生きる活力を取り戻すことができます。更には、お看取り間近で声かけに反応が見られなくなった状態でも、音楽を奏でると呼吸数や心拍数が速くなったり、体を動かそうとしたり、お看取りの瞬間まで聴力が残っていることが体感でき、介護に疲弊したご家族に喜びと楽しみをもたらします。
音楽を媒介として、その人の奥に備え持つ健康的な生命の活力に触れることは、伊東ホスピスケアクリニックが目指す、全人的苦痛の緩和につながるのではないでしょうか。
伊東ホスピスケアクリニックは、魔法のような音楽の力を借りて、地域の皆様とのご縁から始まる心のハーモニーを奏でながら、望まれる場所で、その人らしく過ごしていただけるような医療・ケアを提供できるよう、努めてまいります。